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名古屋高等裁判所 昭和34年(ラ)167号 決定 1960年1月18日

抗告人 上田繁

主文

原決定を取消す。

抗告人は不処罰とする。

手続費用は第一、二審共国庫の負担とする。

理由

一、抗告人は原決定の不服の理由として津地方裁判所の同種事件について不処罰の決定を得たから再審査の上善処を求むと申立てた。

二、そこで、審理するに、原決定は抗告人は三重県販売購買農業協同組合連合会の理事であるところ昭和三十四年五月八日同連合会監事杉坂政市が辞任し登記事項に変更を生じたるに拘らず之が変更登記を法定期間になさず昭和三十四年六月九日その手続をなしたものであるとの事実を認め抗告人を過料千円に処したことは原判文上明である。然しながら記録によれば右杉坂政市が退任したるにより右組合の監事の定数を欠くこととなつたので農業協同組合法第四十一条商法第二百五十八条第一項により杉坂政市は後任の監事たる伊藤信之丞が選任せられた日即ち昭和三十四年五月三十日までその職務を行うべきこととなつたわけである。而して、かかる場合においては従来登記官庁の取扱としては退任の登記申請がなされても之を受理せず後任の役員の就任登記申請と同時又はその以後になされる場合にはじめて受理することとなつていること昭和三〇年四月二六日民事甲第五四七号法務省民事局長回答に照し明である。ところで抗告人は右登記官庁の取扱例を知つていたので之に従つて後任の監事伊藤信之丞の就任登記と共に杉坂政市の退任登記を昭和三十四年六月九日なしたことが記録上明であるから抗告人に何等の過失なく従つて期間を懈怠したものということが出来ないものといわねばならない。

されば原決定は失当であるから之を取消し非訟事件手続法第二百七条を適用し主文の如く決定する。

(裁判長裁判官 県宏 裁判官 越川純吉 裁判官 奥村義雄)

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